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幹細胞培養上清液による表皮細胞活性

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幹細胞培養上清液に含まれるサイトカインの働きの1つである、体内の細胞を必要な場所に誘導する「遊走性」

 

そもそも幹細胞には破壊されたり傷ついたりした組織や、臓器自体に存在する幹細胞本来の機能を呼び覚まし、その周りに存在する幹細胞を誘導し、損傷部に健全な幹細胞を集めて増殖させる働きがあります。

 

今回はヒトの肌の傷を負った箇所に細胞が早く移動することを模式的に検証するため、幹細胞培養上清液が実際にヒト表皮細胞遊走を活性化しているのかを、BYINA研究所にて検証しました。

 

 

【幹細胞培養上清液:細胞遊走実験】

 

■実験目的

・培養上清液を添加した細胞群と添加していない細胞群で細胞に傷をつけたときの細胞の移動の速さ(遊走*1)の違いを検証するために実施。

 

■実験の方法

1、細胞がフラスコに満ちて増殖するよう、細胞をフラスコで培養する

2、翌日、チップの先で細胞の一部を削る

3、幹細胞培養上清液を細胞に添加した後、インキュベーター(*2)に入れる

 ※今回の実験では、下記3パターンの添加度合いで実施

  ①幹細胞培養上清液:添加無し

  ②幹細胞培養上清液:20%添加

  ③幹細胞培養上清液:25%添加

4、18時間後~48時間後の間で細胞を観察し、各パターン別の遊走度合いを確認する

 

■濃度別活性度合いの結果

 

上記実験から、幹細胞培養上清液によって細胞の移動の速さが活性化することがわかりました。

 

*1 「細胞遊走(セルマイグレーション:cell migration)」とは、細胞が元にあった場所から他の場所に移動することを指し、細胞移動とも呼ばれます。たとえば、表皮にできた傷が治癒する「創傷治癒(ワンドヒーリング:wound healing)」の過程において、この細胞遊走が見られます。

 

*2 細胞を培養するためには、まずはそれぞれの培養に適した温度・湿度・気体組成を整えることが重要となります。どこの研究施設でも、細胞はインキュベーター(培養器)と呼ばれる機械の中で培養されます。インキュベーターとは、空気調整機能付きの保温器です。